【モバマス】 木村夏樹「道とん堀には人生がある」
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12:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/15(月) 02:50:25.51 ID:VQj+6fZHO
「なるほど、分かった。それじゃ……」
「――おい、ちょっといいか?」


 ある程度全容が掴めたプロデューサーは、話を纏めにかかる……が、そこで新たな声が。


「やっぱり、みんな考えてることは同じなのさ」


 一人、涼が呟いた。


「涼、抜けがけはずりぃぞ」
「そんなんじゃないよ、拓海――大体のことは話したよ。プロデューサーも分からないって」


 新たに現れたのは、同じくバンドメンバーであるアイドルの向井拓海。


「ねープロデューサー、なんとかならないのかなー」


 そして、藤本里奈。


「あたしたちにも、できることないかな?」


 と、原田美世が続く。


「その……。私も、私たちも、何もできないのが悔しいんです……!」


 夏樹とは同期で、彼女と共にユニットを組んで活動してきた多田李衣菜。彼女もまた、歯痒い想いを抱えて駆けつけた。


「みんな考えてることは同じ。ホントは夏樹本人に言いたいことは沢山ある……。何かしてあげたいって思ってる。だけど、あいつが余計に傷ついてしまうのが怖いんだ。あいつに任せっきりだったアタシたちにも責任がある。今まであいつが一人で引っ張ってくれたから……。だから、今度はアタシたちが……」


 皆の想いを、涼が代弁する。


「なんてゆーかさ、傷つけることを理由にして、傷つくことから逃げてるってゆーかさ……。ほんと、情けないよねー……」


 いつもは調子のいい里奈も、自身の不甲斐なさに打ちひしがれて肩を窄ませる。


「……だから、私たちにもできることがあれば、何でもやります!」


 李衣菜はそう言って、一歩前に出た。


「……」


 皆の想いを受けて、プロデューサーはかける言葉に迷い一人逡巡する。


「やっぱりアタシが直接、ストレートに聞いてやるよ! グズグズしてる場合じゃねぇ、それが一番だ!」


 しびれを切らした拓海が、背を向けて屋上の扉へ向かおうとした。


「――待て、拓海」


 しかし、プロデューサーがそれを制止する。


「分かった。まずは俺がなんとかしてみる。だからお前たちは、今はあいつをフォローしてやってくれないか? それとなくあいつに話してみる」
「そう言われてもよ……、何もしないわけにも……」
「大丈夫だ。お前たちは何もできないわけじゃない。お前たちの役割は、あいつに何かあったとき、その時に全力で守ってやることだ」
「……」
「だから、今は俺に任せてくれ。お前たちの力が必要になったら声をかける」

 そして、彼は強く宣言する。その声には覚悟の色が窺える。

「……ありがとね」

 すっかりと夜の帳が下りて暗くなった屋上。小さな屋上灯がほのかに照らす中、涼のその言葉だけが静かに響いていた。


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