9: ◆jEbRvHU8C2[sage saga]
2019/07/14(日) 15:54:14.31 ID:UfnhAP/w0
まずはそこに届く手段を用意しなければ。
最奥にあった踏み台をよいしょと持ち上げて、『弐』の棚の前へ。
目的は本の持ち出しであって掃除ではありませんから、
積もった埃をそのままに、踏み固めながらひょいひょいと段を登る私を、
プロデューサーさんが見守っていてくれます。
車で移動しているときからずっと、台に乗って本を取る行為を心配してくれたのですが、
慣れているから任せて欲しいと願い出て、最終的に私が押し通すカタチで今に至ります。
5段目に足をかけると、ちょうど眼の前に棚の『弐』の字札がありました。
もう1段と登って本の列と対面し、しかしながら背表紙の文字は読めません。
塗れた埃に文字が隠されてしまっていましたから。
手を伸ばし軽く払うと、まるで箱詰めした本にかけられた緩衝材のように、
固まりを成しながらごっそりとまとまって動いて、背表紙への道が開かれました。
さすがの高所、埃だけでなく、どうやらクモの巣もあったようです。
この分だと巣が放棄されてからかなりの時間が経過していますねと、
主と遭遇しないであろう結果に安堵しながら分析し、そしてもう1度の払い退け。
幾重にも張り巡らされたそれは主なき後も埃を吸着し続け、大きく厚くなっていたようで、
さながら本列を絡め捕る網のようでもあり、棚を境に本を守る守護壁のようでもありました。
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