38: ◆jEbRvHU8C2[sage saga]
2019/07/14(日) 16:11:06.07 ID:UfnhAP/w0
私と眼があって、それでも笑んだままで、…思わずつられて私もまた笑み返しました。
と同時に。その顔の向こう、さきほどまで小刻みに動いていた彼の腰が、
中途半端に浮かされたままになっているのが見えました。
ヨダレを拭ったそのままに、彼の頬を抱えるように、両の手を差し伸ばして。
ぺちょりと、ねばつく濡れ音。彼の顔を汚した、私の。
手を離し引くと指という指から、否、指の間にさえ、
場所を選ばずに薄白く濁った透明の橋がいくつもかかりました。
それらは水滴を伴い重力に引かれて、ゆっくりと落ち消えていきます。
私は再び彼の顔に触れ、また橋がかかって、粘ついて。
ともすれば真新しいクモの巣が張られ、彼を絡み取ったようにも見えて、
それをただじっと動かずに笑んだままで居てくれることが、…たまらなく幸せで。
嫌われてしまうことの恐怖が先立ってしまっていた私を、赤い糸が橋渡しをしてくれて、
きっとここまで渡って来られたのです。
私だけでは、赤い糸は生み出せませんでした。
今のように、濁っただけの糸。
しかし今日は違います。
今日は確かに、その糸が彼との間にかかった、ねちゃりと引く糸が彼と私を結び付けてくれたのですから。
それが、こんなにも、こんなにも確かめられたことに、深い安堵を覚えました。
46Res/41.65 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20