鷺沢文香「本に、命を」
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34: ◆jEbRvHU8C2[sage saga]
2019/07/14(日) 16:09:06.54 ID:UfnhAP/w0
ぎゅうぎゅうと挟まれた彼の感触を感じながら、ふと、かつての本のことが脳裏をよぎりました。
叔父さんから買い取った、売りモノにならない本。

持ち帰った私は、あの本を手に机に向かいました。
表紙と背表紙を両の手でそれぞれ持てば、自然と開く、彼の血を内包した箇所。
べっとりと張り付いたページ同士が、少しも揺らがずにくっついていました。
手を表紙からページ同士へと移し、そして。血着された箇所が破れ剥がれるのも構わず、
…否、どこかそうなるよう願いながら、左右へ引き開けました。
べりりばりりと音を立てて、開いたそこにクセがつくのもお構いなしに。

そして、ページから分離した薄紙がまだ血で互いにくっついているのを、爪を立てて引き剥ぎ、
もとい、削り落として、そうして。
彼には決して見せられないような惨状が、広がり散らかるに至りました。

よほどのことがなければ、ただくっついたページを開くようにしたという、
ともすれば正義の行いに映るでしょう。
裂き剥がれた紙屑を必要悪と棄てて。


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