鷺沢文香「本に、命を」
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33: ◆jEbRvHU8C2[sage saga]
2019/07/14(日) 16:08:37.51 ID:UfnhAP/w0
運命の赤い糸と言う表現があります。
言われは諸説ありますが、興味深いものが1つ。
いわく、嫁ぎたての嫁を安心させるために旦那が用いた方便だったというものです。

かつて、現代日本で考えれば年端もいかぬ娘を、当人を置き去りに家同士だけで決めて嫁がせていた時代。
知らぬ天井を見ながら、知らぬ男に抱かれ、知らぬ感覚に震える娘。
初夜の床でその娘から引き抜く際に、破瓜の血と互いの粘液が混ざったものが線を引く。
身体の繋がりが離れることを惜しむかのようにかかる粘液の赤橋を、運命や天啓の類に見立てて、
今こうして愛し合ったことで可視化した、最初からこうなるよう決まっていたのだと説いた、という考察です。

であれば。

あの日、私を汚したのは、彼の血ばかりではありません。
男女どちらの、どこから漏れ出でた血かの違いはあれど、血と粘液で具現化するものであるならば、
あの日、私は運命の赤い糸が、繋がれたことを確認しているのです。
彼が、私のスカートから顔を出した、あのときに。

こうして彼の鼻を挟み続ければ、また鼻血を誘発して、
そうすればあのときのように、赤い糸がそこに現れるのでしょうか。
などと想いながら、閉じる脚に力を込めて。

あれから何度やっても私1人では赤くならない糸の再びの出現を、こんなにも心待ちにしてしまいます。


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