11: ◆jEbRvHU8C2[sage saga]
2019/07/14(日) 15:55:29.59 ID:UfnhAP/w0
叔父さんが扱うのは古書が主としていて、つまりは誰かの手から渡り移ってくるもので、
栞がそのままというのもよくあることです。
ぴょこんと飛び出たそれをプロデューサーさんがゆっくりと引き抜くと、
すっかり茶色でカサカサになった、かろうじて元植物だったとわかる存在が張り付いた栞が出てきました。
ドライフラワー、…ではなく、経年で朽ち枯れたものでしょう。
日常茶飯事ゆえに、これらは今更に持ち主を探し出して返却などは致しません。
ただ、こちらで預かるという名目で処分するのがほとんどです。
読み手に命じられページ経過を記録し守り続けてきた歴戦の栞であれ、
残念ながらそれは変わらないのです。
最初こそ私もそれを憂い、そんなことをしていたらキリがないよと言う叔父を押し切って、
返却作業を行っていました全ての本の全てのページをめくりながら、忘れられた存在を探して、
本の譲り手など叔父さんから貰ったリストを参照に、休日を訪ね歩きに費やして、…そして。
出所のわからない使命感が失速するのに、それほど時間はかかりませんでした。
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