神谷奈緒「今はまだよくわからないけれど」
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8: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2019/06/28(金) 06:24:49.84 ID:hRYw497E0

学校で進路希望調査を渡されたこと。

その記入のために悩んでいること。

そして、それを親に相談したところ、厳しい言葉をかけられたこと。

あたしはできる限り包み隠さず、全てをプロデューサーさんに語った。

「…………なるほどなぁ」

「その、スカウトん時から世話になってるプロデューサーさんにこんなこと言うのは、良くねーのかもしんないけど……」

「いや、大丈夫。うん、お母様のその指摘は至極真っ当なものだと思うし、自分の娘の将来がかかってるんだから、そう言う気持ちもわかる」

「やっぱ、そう、だよな……」

「でもね、奈緒」

「ん?」

「奈緒には、奈緒がやりたいことを思うままにやる権利があるよ。そして、そうやって思うままに行動したことで起きたあらゆる結果は、奈緒の責任になる。勝手なことを言うようだけど、こればっかりは奈緒の人生の問題だしどうにもしてあげられないからね」

「……うん、わかってる」

「もちろん、肩代わりしてあげられる責任はこっちに振ってくれていいんだけどね。それに、俺の出番はきっと、奈緒が答えを出した後で来ると思うし」

「答えを出した後?」

「そう。奈緒の出した答え、奈緒の選択を実現するために全力を尽くすことだけは約束する」

「そう言ってもらえるのは嬉しいけど、具体的はどういう……?」

「ああ、まぁ、たぶんしばらくしたらわかる」

「?」

「まー、今はじっくり考えなさい」

「うん。よくわかんねーけど、わかった」

「あとはそうだなぁ。俺から言えることは……いろんな人の話を聞いてみるのも良いと思うよ、ってことだな」

「いろんな人?」

「うん。例えば、これから今日のレッスンでご一緒する三船美優さん。あの方は大卒で就職をして、そこからアイドルになったと聞いてるから、そのときの心境とか、そういうの、聞いてみたらいいんじゃあないかな。聞き辛ければ俺から聞いてあげてもいいし」

「……そっか、三船さんもすげー経歴と言えば、すげー経歴、なんだよなー……。うん、ありがとな。自分で聞くよ」

「きっと、親身になって聞いてくれると思うよ。三船さんも、その担当も人の良い方だから……さて、というところで」

車がゆっくりと減速して、やがて完全に停止すると同時にプロデューサーさんが「着いたよ」と言った。

「じゃあレッスン頑張って。荒木さんも三船さんも入りは同じはずだからもしかしたらもう来てるかも」

「わかった。……その、ありがとな」

「まだ送ってきただけだよ」

「そーじゃなくて、その、ほら」

「ほら?」

「話聞いてくれて、ありがとな、ってこと」

「ああ、うん。答え、出るといいね」

うん、と返事をして車を降りる。

ばたん、というドアの閉まる音ののちに、プロデューサーさんは車を発進させ遠ざかっていった。



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