12: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2019/06/28(金) 06:30:32.19 ID:hRYw497E0
美優さんの話を聞いて、脳裏に一人の男の顔が浮かぶ。
友人との待ち合わせをしていた際に、しつこいほど名刺を持って近付いてきたあの男。
何かあるたびにお節介なくらいあたしに世話を焼いてくるあの男。
あたしが不自由しないように、スケジュールの調整から送り迎えまで、自分だって忙しいのにしてくれるあの男の顔だ。
ああ、そうか。
あたしは、あの男だったからアイドルになったのか。
今更、そんな不思議な納得があった。
そして、胸の内にあった悩みへの自分なりの答えが出た気がした。
「美優さん、あたし、わかったかも」
「……? よくわからないけど、奈緒ちゃんのお力になれたなら良かったです」
「いや、ほんっとーに感謝してる! で、えっと、その、あたし行かねーといけないとこができて」
「ええ、ふふ。私のことは気にせず」
「美優さん、ホントにありがとう! また!」
「はい。また」
転げるようにしてレッスンルームを出る。
猛スピードで帰り支度を終えすぐに更衣室のロッカーの鍵を受付へと返して、レッスンスタジオの玄関を抜けると正面の通りにはプロデューサーさんの車が停まっていた。
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