【たぬき】高垣楓「迷子のクロと歌わないカナリヤのビート」
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304: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/09/05(木) 01:22:51.47 ID:9I+qLSeE0

 彼女は自分で自分の顔に触れた。
 目を閉じて、顔の左側。泣きぼくろを備えた左眼のあたりを撫で、形のいい柳眉、まぶた、長い睫毛にそっと触れて。

 そこに宿る大切なものと、言葉を介さず語り合う気配。

 しばしの間を置き、目を開く。

 まっすぐに俺を見据える瞳は、どちらの色も、どこまでも穏やかだった。


「今なら、歌えそうです」





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