【たぬき】高垣楓「迷子のクロと歌わないカナリヤのビート」
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295: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/09/05(木) 01:01:11.94 ID:9I+qLSeE0

 そこから鬼のようなダメ出しが始まった。企画内容の現実性、将来性、短期長期の展望と具体的なスケジュールの詰め方。
 こちらとしても頭を絞ったつもりだが、相手は海千山千の古強者。隙だらけも甚だしいと言わんばかりの突っ込みはぶっちゃけこれまでの出来事の中でも一番キツかった。
 しかしこっちも気圧されてはいられない。冷静で的確な指摘に一つ一つ答え、一歩も退かぬ構えで喰らい付く。

「しかし、君はこれをどう――」


「いいと思います」


 書類をまとめ、部長の隣に座る大柄な男が口を挟んだ。
 部長の直属の部下だという彼は、俺やヨネさんやタクさんからは先輩にあたる人だ。

「……笑顔というところが、特に」

 そう言う本人は巌のような表情筋をピクリとも動かさないのだが、だからこそ滲み出る説得力みたいなものがあった。
 今西部長は言葉を切り、困ったように笑う。

「うーむ……私もそれで締めようと思っていたのだが、どうも先を越されてしまったようだ」
「……申し訳ございません」
「構わんよ。後はどう細かいところを詰めるかというだけの話だったからね」




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