【たぬき】高垣楓「迷子のクロと歌わないカナリヤのビート」
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◆DAC.3Z2hLk
[sage saga]
2019/09/05(木) 01:00:00.08 ID:9I+qLSeE0
◆◆◆◆
「ふんふん。なるほど……ね」
正直、採用面接の時よりも緊張する。
今西部長のオフィスに通されて、俺は彼が出来立てホヤホヤの企画書に目を通していくのを固唾を飲んで見守っている。
「――最初は驚いたよ。あんなに渋っていた君が、まさか自分から部署の立ち上げを希望するとはねぇ」
しみじみと、部長。穏やかな目尻には何かを懐かしむような気配があった。
「勝手なことを言って申し訳ありません」
「いや、構わないよ。意気を示すのに早いも遅いもないからね。優秀な人材であれば、うちはいつでも大歓迎だ」
もちろん、彼の発言には含意がある。
優秀な人材であれば――裏を返せば、そうでなければ要らん、ということ。ごく当たり前の話だ。
部長は眼鏡の奥の温和な瞳を、一瞬ぎらりと閃かせた。
「さて……当アイドル部門は、ありがたいことにどこも多忙だ。君がそこに食い込めるか、我々の時間を消費させるに足る人材なのかだが――」
息を呑む。
ここからが本番だ。
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