【たぬき】高垣楓「迷子のクロと歌わないカナリヤのビート」
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296: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/09/05(木) 01:08:48.36 ID:9I+qLSeE0

「え……と。それでは……?」
「コンセプトは良い。君の発想に欠けているのは、我が社の設備や人材、コネクションをどう効率的に使うかという視点だよ。プロデューサーを名乗る以上、そこを外してはいけない」
「ご存知の通り、弊社は業界の各所に太いパイプを持ちます。独力にこだわらず、使えるものをフルに活用してこそ、かと……」

 要するに――と、部長はペンを軽く振った。熟練の魔法使いのような手つきで。

「明日にでも走り出せるかどうか、という話だ」
「……!」

 張り詰めていた空気が、部長の笑顔でゆるっと弛緩した。
 その一言で、足先から脳天にまで煮え滾るような達成感が満ち満ちた。

「ごく個人的な感想としては、君がその気になってくれてとても嬉しく思う。アイドル部門へようこそ」
「わからないことがあれば、ご質問ください。お力になれるかと思います」
「ありがとうございます!!」

 椅子を蹴倒す勢いで立ち上がり、深々とお辞儀をする。
 やった。
 いや、これからだ。まだ何も成し遂げてはいない。だが、ひとまずは、壁を越えた。最初の壁を。

 まずはより具体性を詰めた企画書の作り直し。部長には認めて貰えたが、正式の社の会議を通るかどうかはまた壁だ。
 いや、やってみせよう。まだ始まってもいないのだから。




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