【たぬき】高垣楓「迷子のクロと歌わないカナリヤのビート」
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254: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/08/31(土) 23:18:49.29 ID:zSc+xtMY0

 柊さんは、しばらく黙っていた。
 ほんの数秒ほどだろう。けれど主観的には気の遠くなるような沈黙を経て、彼女はグラスのワインを飲み干した。

「決意は、固いのね?」

 沈黙を肯定とする。
 柊さんはグラスを置き、穏やかに微笑した。
 その顎がわずかに頷いたように見えた。

 認めてくれたのだろうか?

 一瞬思ったのは、しかし甘い考えだと知る。


「なら、これが最後のお邪魔虫」


 もう一度、ちんっっ――とグラスが弾かれた。




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