【たぬき】高垣楓「迷子のクロと歌わないカナリヤのビート」
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253: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/08/31(土) 23:17:47.53 ID:zSc+xtMY0

「野良犬に餌をあげるのとはわけが違うの。これ以上深入りすれば、あなたは間違いなく戻れなくなる。楓ちゃんの為を思うなら、あの子が悲しむようなことはやめなさい」

 喉元に刃を突きつけられているにも等しい。
 ここは既に「大晦日の大通り」ではない。柊さんが端から端まで掌握する一種の異界だ。
 次の瞬間に何が起こるかなど、ただの人間には想像もできない。まして彼女の忠言を跳ねのけてしまえば……

 だが。

「あなたは、ひとつ勘違いをしてます」
「……?」
「高垣さんの為、じゃない。俺の為だ。俺がそうしたいから、追いかけるんだ」

 能力、ビジネス、適材適所、リスクがどうとか、相応しいとか相応しくないとか。
 そういう建前は、もういい。要らない。自分を安全圏に置きたいがためのしゃらくさい言い訳でしかない。

 変わりたくないと思っているうちは、何も変えることができないから。

「俺は絶対に高垣さんに会いに行きます。誰に嫌がられても。……そうして、ちゃんと伝えたいことがある」




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