【たぬき】高垣楓「迷子のクロと歌わないカナリヤのビート」
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209: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/08/22(木) 00:24:48.87 ID:rmOYl90d0


「『何かが足りない』……って時は、たぶん、自分が動かなくちゃいけない時なんじゃないかな」


 ヨネさんが、缶コーヒーを片手にぽそっと呟いた。

「ヨネさん?」
「ああいや、なんとなく思ったんだ。Pさん、自分でもよくわかってないんだろ?
 そういうことあるよなって。理屈じゃないんだよな。俺も何度かそういう話をしたことあってさ」

 彼の部署はジュニアアイドルがメインとなっている。
 だからだろうか、ヨネさんは理屈や損得じゃない「感覚的」な話を整理するのに慣れているようだ。
 子供は正直だし、多感だ。けれどその感性を言語化できるほど精神が成熟していない。そこに道筋を示すのも、プロデューサーの役目だ。

「結局、何が足りてないのかは自分にしかわからないんだよな。だから、動くしかないんだ。
 思い付くことを試してみて、なんでもいいから一歩前に進めば、足元が見えてきて……
 自分に足りないものが、輪郭だけでもわかるんじゃないかと思う」

 続く言葉に耳を傾ける。
 彼は、「プロデューサー」の顔をしていた。


「それで多分、同じような思いを持ってるのは一人じゃない。
 だから自分だけでもそれに気付けば……似たような誰かの穴を、埋めてあげられるんじゃないかって」




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