【たぬき】高垣楓「迷子のクロと歌わないカナリヤのビート」
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170: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/07/27(土) 16:07:47.95 ID:aiDwMVos0


 風が逆巻く。
 遥か頭上の木々が一斉にざわめき、黒い紅葉を雲霞のように吹き散らした。


「……!!」
「歌を聴かせてあげましょう。優しく抱いてあげましょう。望むことをなんでもしてあげましょう。
 だから代わりに、あなたの全てを、私たちにください」

 無邪気な笑み。
 上昇して渦を巻く木の葉の竜巻が、二人の周囲を完全に閉ざす。

 一歩、女が踏み込んで、鼻先に立った。

「ここには光も闇もありません。誰にも置いていかれたりしません。
 いなくなってしまった人たちのことを思い悩む必要もありません。
 だって私たちがずっと傍にいるんですもの」




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