【たぬき】高垣楓「迷子のクロと歌わないカナリヤのビート」
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152: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/07/14(日) 01:02:18.13 ID:TmI5fe2I0

   〇


 そこそこ遅い夜だった。

 川面に吸い込まれゆく雨粒を見ながら、桟橋に隣り合って座る。
 冬ももう近く、雨は触れたら震えそうなほどに冷たい。これが雪に変わる日もそう遠くはあるまい。


「ええと」
「はい」
「あれから、色々考えたんですけど」

 傘を打つ雨音を聞きながら、ぽつぽつと順を追って話した。
 うまいセールストークなどできるはずもないので、これまで俺が考えたこと、話したこと。
 あなたの足跡を辿りながら何を思い、どういうつもりであなたを探していたのか。

「――確かに新しい挑戦です。今までとは勝手が違う。けど、高垣さんならできると信じます」
「……」
「ご自分の歌が嫌いだということ、柊さんから聞きました。それでも言います。あなたの歌を必要としてる人は、必ずいます」

 その歌が、誰かの救いになるのかもしれないなら。
 やはりそのままにしていていい才能ではない。

 俺の右手側に座り、高垣さんはしばし黙っていた。




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