【たぬき】高垣楓「迷子のクロと歌わないカナリヤのビート」
1- 20
131: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/07/07(日) 22:29:04.10 ID:BmYrOlBS0

 ここ数週間で起こったことを、全部話した。
 俺の決意。進めていた企画。その理由と思惑。

 もちろん、けんもほろろに断られたことも。

 彼女はどうして歌を嫌うのか。あれほどの才能を持ちながら、自ら望んで持ち腐れているのは何故か。
「歌わないカナリヤ」と旧知らしき柊さんならば、あるいは知っているのかもしれない。

 柊さんは最後まで黙って話を聞いていた。

 やがてグラスのワインを軽く回し、上品に口に含んで、語り始める。


「彼女の歌には、魔力があるのよ」

 最初はもののたとえだと思った。
 けれど、ただそれだけとは断言しきれない得体の知れない説得力もあった。

「楓ちゃんの声は、耳にする者すべてを引きつける……人も、鳥獣も、虫魚も草木も、みんな。
 だからこそ誰も放っておかないの。誰もが何度も聞きたがり、あるいは独占したがり……あるいは、利用したがる」

 最後の方は、明らかに俺を見ながら言っていた。

「り、利用だなんて、俺はそんな……!」
「本当にそう言い切れる? 俗物的な私利私欲のためではないとしても、あなたの行動は本当に『楓ちゃんのため』にしたことなの?」




<<前のレス[*]次のレス[#]>>
328Res/204.86 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice