【たぬき】高垣楓「迷子のクロと歌わないカナリヤのビート」
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◆DAC.3Z2hLk
[sage saga]
2019/07/07(日) 22:29:04.10 ID:BmYrOlBS0
ここ数週間で起こったことを、全部話した。
俺の決意。進めていた企画。その理由と思惑。
もちろん、けんもほろろに断られたことも。
彼女はどうして歌を嫌うのか。あれほどの才能を持ちながら、自ら望んで持ち腐れているのは何故か。
「歌わないカナリヤ」と旧知らしき柊さんならば、あるいは知っているのかもしれない。
柊さんは最後まで黙って話を聞いていた。
やがてグラスのワインを軽く回し、上品に口に含んで、語り始める。
「彼女の歌には、魔力があるのよ」
最初はもののたとえだと思った。
けれど、ただそれだけとは断言しきれない得体の知れない説得力もあった。
「楓ちゃんの声は、耳にする者すべてを引きつける……人も、鳥獣も、虫魚も草木も、みんな。
だからこそ誰も放っておかないの。誰もが何度も聞きたがり、あるいは独占したがり……あるいは、利用したがる」
最後の方は、明らかに俺を見ながら言っていた。
「り、利用だなんて、俺はそんな……!」
「本当にそう言い切れる? 俗物的な私利私欲のためではないとしても、あなたの行動は本当に『楓ちゃんのため』にしたことなの?」
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