【たぬき】高垣楓「迷子のクロと歌わないカナリヤのビート」
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◆DAC.3Z2hLk
[sage saga]
2019/07/07(日) 22:26:40.09 ID:BmYrOlBS0
○
あの巨大な桜は、十月を過ぎても満開だった。
永遠に咲き誇ったままなのかもしれない。
柊志乃さんはその根元近くのカフェテーブルで、一人優雅にワインを嗜んでいる。
「あら……。今日は、一人で来られたの?」
柊さんは意外そうな顔をする。
続いて視線がマスターに移って、それで合点がいったようだった。
「私が案内しました。あなたに用があるようだったから……」
「そうだったの。優しいのね」
「放っておけなかっただけですよ」
眉をハの字にして、どこか困ったように笑むマスター。
小さく俺に「頑張ってね」と言い残し、自分の仕事に戻っていく。
その背中に一礼して、俺は柊さんと正対した。
「聞きたいことがあるんです」
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