【たぬき】高垣楓「迷子のクロと歌わないカナリヤのビート」
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128: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/07/07(日) 22:19:46.92 ID:BmYrOlBS0

「見方がわかれば、そんなに難しくはないの。私でも追えるくらいだから」

 赤く色づいた並木道がライトアップされている。
 どこかから金木犀の香りがする中で、マスターは迷わず歩を進めた。

 彼女もちょうど夜市に行くところで、買い物袋は向こうで作る軽食の材料だという。
 歩みはやがて路地へ入り、狭い路地を右へ、左へ……。
 進んでいく中、マスターが肩越しにこちらを振り返った。

「それにしても、今日は一人なのね。カナリヤさんは一緒じゃないの?」
「ああ、いえ、なんというか」

 ありのまま説明するのも気恥ずかしくなり、

「……色々ありまして、はい」

 誤魔化せたつもりだが、マスターは何をどう解釈したのかくすくすと笑った。

「二人とも、隅に置けないのね」
「ぬぁ!? ち、違いますからね!? そういうのじゃなくて……!」

 何を言っても柳に風だった。
 すっかり自分の中で何か結論を出してしまったらしく、マスターはどこか上機嫌そうに歩を進める。




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