【ミリマス】馬場このみ『衣手にふる』
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86: ◆Kg/mN/l4wC1M
2019/10/17(木) 11:46:57.45 ID:eH8hmcZZo

「……私は、この子の願いを叶えてあげられるのかな。」

このみは、ひとり舞台の上でぽつりと呟いた。
しばらくの間腕の中に抱いた資料の表紙を見ていたこのみであったが、それからゆっくりと目の前の客席を見た。
気がつけば薄暗がりにはすっかり目が慣れてしまっていたらしく、いまは一番奥の客席まで見えるようであった。
一階席はずっと奥まで座席が設けられているし、二階席だって何列あるのかすぐ数えられないほどある。
実際のライブでは、その座席の数だけの大勢のお客さんが劇場に足を運んで歌やダンスを見に来てくれる、ということだ。
劇場の公演は1公演あたり数時間であるが、その中でこのみがステージに立っている時間はそれよりもずっと短い。
ましてや、自身の想いを乗せて伝える『大切な歌』は高々5分程度の時間しかない。
「その中で、そんなことが本当に私にできるのか?」
「もしも曲が終わり照明が落とされたとき、『ただ、それだけで終わってしまったら』?」



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