85: ◆Kg/mN/l4wC1M
2019/10/17(木) 11:42:35.94 ID:eH8hmcZZo
資料が濡れてしまわないようにと、このみは目尻を指で拭った。
このみがしばらくしてゆっくりと目を開けた時には、その瞳は真っ直ぐ前を向いていた。
あの時出会わなければ、誰かを好きになる、こんな気持ちを貰うこともなかったんだ。
この子が青年の家に押しかけたのも、自分の想いを伝えたかったからなんだ。
あの人と初めから会っていなかったならこんなに悲しい思いをしないで済んだのに、だなんて、そんなこと思ったりするはずがない。
だって。だってこの子は──。
胸の前に抱えたものを、このみはぎゅっと抱きしめた。
手放してしまわないように強く、そして消えてしまわぬように何よりも優しく。
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