177: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 21:46:25.80 ID:9DhA16vx0
「このみさん。」
彼は、手を握ったままこのみを見つめて、一言、そう言った。
このみは、ただそれだけで、冷えきった左手が暖かくなるのを感じた。
少しの間が空いて、それからこのみは口を開いた。
ぽつりぽつりと、言葉を溢すように。
「……ステージにみんながいるのに。私一人だけが何処にもいないなんて、苦しくて。」
本当ならば、劇場のみんなが活躍していることを喜ぶべきなのに。
このみは、それを心から素直に受け止めることができそうになかった。
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