60: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 22:49:00.06 ID:9pdDfgPfo
「──大和撫子に憧れていなかったら、日本でアイドルになんてならなかったかも知れない」
「……ちょっと、それ」
「憧れを失ったエミリーは……まだ日本にいたいと思うのかな?」
「待ってよ──」
伊織が続けて何かを言いかけた瞬間、携帯電話が着信音と共にポケットの中で震えだした。
取り出して発信元を確認してみると高木社長からだった。「出てくれ」と合図をし、伊織に手渡す。
伊織は少しの間光る画面を見つめて、ようやく通話アイコンをタップした。
「もしもし、伊織です。 ……今、プロデューサー運転中だから、代わりに」
伊織は途切れ途切れに何回か相槌を打つのみだった。
向こうの音声が微かに聞こえるものの、どういう話をしているのかまでは分からない。
落ち着かないこの時間が何分、何十分にも感じられる。
「……嘘でしょ……?」
伊織の反応を聞いて、心臓が少しずつ鼓動を早めた。
「……わかった。 とにかく……行くから」
そう言って通話を切った伊織の声は少しだけ震えている。
「……すぐ事務所に戻って」
「ちゃんと向かってる──」
「飛ばしなさいったら!!」
訳も分からずアクセルを踏み込んだ。
「何の話だったんだって! エミリーのことなのか!? そうなんだろ!?」
開けた窓から入り込む風と轟音に掻き消されないように、隣に座り込んで顔を両手で覆う伊織に叫び続けたが、返事はない。
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