エミリーが忘れた日
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58: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 22:45:01.86 ID:9pdDfgPfo
 
「……ごめん」

深呼吸をして頭を一旦落ち着かせてから、先生に問い直す。

「……そのエピソード記憶を思い出させてあげれば、日本語の記憶も元通りになるかも知れないってことですか?」
「……それは分かりません」

先生も小さくため息をつく。
結局、ぼんやりしたヒントだけ手に入って解決の糸口は掴めないままだ。

「──できれば」

どうすればよいかもはっきりしないまま病院を去ろうとする俺と伊織に、先生が最後に声をかけてきた。

「お気の毒ですが、スチュアートさんには……なくした記憶を思い出すよう、あまり強要しないであげていただきたい」
「どうして……」
「本人は自身の思想の変化に気がついているはずです。
 なぜなら、保持している過去の言動の記憶と現在の思考が一致しないという体験が自然と増えてくるからです」

先生の言葉に今日のエミリーの姿が思い浮かばれる。
好きだったはずの歌の良さが分からないと放心状態で力なく話していた寂しそうな眼。

「つまり……自分の性格が変わってしまったという自覚があるんです。 スチュアートさんには、きっと」
「…………」
「その場合の精神的なショックは、我々には計り知れません」

エミリーは、今の自分をどう思っているのだろうか。



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