45: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 22:28:21.72 ID:9pdDfgPfo
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エミリーは四歳のとき、初めて日本語を知った。
当然ながら最初は自分の意思ではなく、ご両親の日本好きが高じてわが娘にも、というお決まりの流れだったようだ。
日本語と同時に習い始めた日本舞踊も、着物の帯は苦しいし正座は足が痺れるしで幼いエミリーは大層苦手に感じていたらしい。
「いずれ好きになってくれる」ことを両親から期待され、彼女はとりあえず我慢して二年間日本語と日本舞踊に触れ続けた。
おかげで六歳のエミリーはひらがな・カタカナ・そして初歩の漢字の読み書きまで習得し、
日本語会話も簡単なコミュニケーションだけなら一人で取れるようになったのだ。
ただ、彼女自身の好みまではご両親の期待通りには行かなかったわけで。
もしかすると、いずれ二つの習い事は大きくなったいつかの日にすっかり辞めてしまっていたかもしれない。
そのまま大した興味も抱かずに自然と日本の文化から離れ、
今頃は何事もなく母国で過ごしていた──そんな可能性もあったかもしれない。
それを変えたのが、六歳になったエミリーが出会った初めての日本人の女の子。
たまたま親の都合でイギリスを訪ねていたその子はまるで日本人形のような、慎ましやかで雅な出で立ち。
額のあたりでまっすぐに切り落とした、美しく特徴的な黒髪。
まさしく「立てば芍薬、座れば牡丹」をその身で表していたという。
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