30: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:32:52.98 ID:kcSV+mvpO
うわぁぁ、と喚くように周子は手足をじたばたさせる。
頼むから暴れないでくれ。ただでさえ妙なところを触らないよう、気を付けておぶっているんだから。
31: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:33:21.82 ID:kcSV+mvpO
そうやってじゃれ付いていた周子が、ぴたりと動きを止めて黙り込んだ。俺は慌てて訊ねる。
「……もしもし周子さん? どうした、気持ち悪い?」
32: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:34:19.48 ID:kcSV+mvpO
「わははははっ! たのしーーーっ!」
馬鹿笑いをしながら周子は揺れていた。120度近い弧を描くほど力一杯、ブランコを漕いでいる。真夜中に全力で遊具を使う女。傍目で見ると中々異様な光景だ。
33: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:34:54.13 ID:kcSV+mvpO
そりゃ散々やけ酒した後にあんな運動をしたら、三半規管もぐちゃぐちゃになるだろう。
「うぅぅ……吐きそうー……」
34: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:35:31.50 ID:kcSV+mvpO
公園内にある自販機で水を買ってベンチへ戻ると、周子はしおらしくなっていた。
「ほんまごめんって……許してぇ」
35: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:36:11.89 ID:kcSV+mvpO
不幸中の幸いだが、二人とも服が汚れるようなことはなかった。周子にかろうじて残った理性が必死に働いたのかもしれなかった。
「あっはっは。いやぁ、流石にブランコは不味かったねー」
36: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:36:46.96 ID:kcSV+mvpO
「いくらか楽になったんなら、ぼちぼち帰るぞ」
ベンチから立とうとしながら俺は周子に声を掛ける。
37: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:37:40.83 ID:kcSV+mvpO
何馬鹿なこと言ってるんだ。そりゃオーディションに落ちて凹んでるのは分かるけどさ。それにしてもお前今日は、やけに面倒臭いこと言うなぁ……。
そんなことを胸の内で溢して、周子の顔を眺める。
彼女はそっぽを向いて唇を尖らせていた。
38: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:38:48.50 ID:kcSV+mvpO
──ゆらゆら揺れて夢のようで
周子の澄んだ歌声が狭い部屋に響いていた。
39: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:39:44.94 ID:kcSV+mvpO
「あれ、まだ曲入れてなかったん?」
歌い終えた周子は俺の隣に座って、タブレットを覗き込んで来た。
40: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:40:23.49 ID:kcSV+mvpO
そしてそれを意識してしまったことに、自己嫌悪する。
……何どぎまぎしてるんだ、おっさん。
思春期の男子中学生みたいな反応してんなよ。
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