10: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:20:47.87 ID:kcSV+mvpO
── 春 ──
「はぁー……久しぶりのお酒、美味しかったーん」
11: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:21:27.14 ID:kcSV+mvpO
「──それにしても。ライブまでの間、そんなに焼鳥食べたかったのか?」
からかうように訊ねてみる。何でもご馳走すると告げると周子が即答したのは、事務所近くの焼鳥屋だった。
12: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:21:56.41 ID:kcSV+mvpO
スキップでも始めそうな程に軽やかな足取りの周子。
そんな彼女はこちらを振り向いて、急に猫撫で声を出してきた。
13: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:22:42.28 ID:kcSV+mvpO
コンビニの明かりがやけに眩しく感じた。安っぽい出汁の匂いがしてぼんやりと思う。もうそろそろ、おでんも見なくなる時期だなあ。
店内には菜々さんの新曲が流れていた。十七歳の菜々さんと、二十歳の周子。彼女達の年齢は少しずつ離れていく。そう考えると何だかおかしい。
14: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:23:20.42 ID:kcSV+mvpO
「……ん? なぁに?」
「欲しい物あるからって、毎度媚売らなくていいんだからな。最初から素直に言え」
15: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:23:59.07 ID:kcSV+mvpO
「んー……期間限定って惹かれるなぁ。でもやっぱ雪見だいふくも……」
ショーケースを覗き込んで、周子が唸っていた。その横で俺も一緒になってアイスを眺める。
16: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:24:31.64 ID:kcSV+mvpO
周子の言葉の意味が分からず、俺はきょとんとしてしまう。話題がすぐにあっちこっちと飛び回る俺達の会話は、稀にこんなことがあった。
「は? 何がだ?」
17: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:25:03.30 ID:kcSV+mvpO
「あー……それはどうも」
「Pさんはどうなん」
18: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:25:40.31 ID:kcSV+mvpO
「嫌いなわけないだろ」
「ほんと?」
19: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:26:18.40 ID:kcSV+mvpO
コンビニを出た俺達は公園に足を踏み入れていた。数ヶ月前と同じように、時計はぽつねんと立っている。
日付の変わったばかりの砂場には、人っ子一人いなかった。
20: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:26:49.25 ID:kcSV+mvpO
周子がアイスを食べ終えて、そのゴミまでしっかり俺に手渡してきた直後のこと。彼女は突然大声を出した。
「あーっ!!」
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