25:名無しNIPPER[saga]
2019/05/28(火) 14:54:55.73 ID:VZdRWGZA0
シンジはチョーカーに手をかけて、首に巻き付いた鉄の輪を剥がそうとする。
「絶対にはずしませんよ……それ……」
ベレー帽の女の子は、両手でバインダーを抱きかかえながら独り言のようにつぶやいた。
「面会終了。彼を隔離室へ」
そう言ってミサトはモニターの方に向き直す。シンジは手を止めて唖然とした表情をブリッジに向けた。
26:名無しNIPPER[saga]
2019/05/28(火) 15:12:05.79 ID:VZdRWGZA0
「検体・BM-03、仮称『碇シンジ』さん。副長から説明があるそうです」
まるで刑務所のような鉄格子の中に隔離された部屋の中で、ベッドに横になっているシンジの背中に、ベレー帽の女の子が呼びかける。
「これが初号機……?」
ヴンダーの機体をモデリングしたCGを目の当たりにして、シンジが素直な感想を口にする。
「ええ。初号機は現在、本艦の主機として使用中。ゆえにパイロットは不要です」
27:名無しNIPPER[saga]
2019/05/28(火) 15:12:54.54 ID:VZdRWGZA0
「なんですかこれ……?」
モニターのCGは、シンジの首に巻かれた物に変わっていた。リツコは、それについて科学者然とした語彙で説明する。
「私たちへの保険。覚醒回避のための物理的安全装置。私たちの不信と、あなたへの罰の象徴です」
「どういうことですか……?」
シンジはその真意を読み取ることができない。
28:名無しNIPPER[saga]
2019/05/28(火) 15:13:22.39 ID:VZdRWGZA0
「それって……死ぬってことですか?」
29:名無しNIPPER[saga]
2019/05/28(火) 15:13:51.28 ID:VZdRWGZA0
モニターの映像が切られる。
「否定はしません」
モニターの前に座っていたシンジは、驚いた表情でリツコの背中を見る。リツコはシンジに背中を向けた状態でコンソールを見たまま振り向こうとはしない。
30:名無しNIPPER[saga]
2019/05/28(火) 15:15:07.40 ID:VZdRWGZA0
「そんな……ミサトさん、どういう事なんですか死ぬって!?」
シンジは、入り口近くの壁に寄りかかっていたミサトの方を見て訴えかける。少しずつだが、自分の取り巻く状況が分かってきたことで、感情が高ぶった声になって行く。
「変ですよミサトさん!急にこんなことになってて訳わかんないですよ!」
しかし、ミサトは腕を組んだまま俯き、口を開こうとはしなかった。その訴えを受け止める変わりに、リツコはシンジの傍らに立っているベレー帽の女の子を引き合いに出した。
「混乱するのも無理ないわ。少尉」
31:名無しNIPPER[saga]
2019/05/28(火) 15:16:31.87 ID:VZdRWGZA0
「あ、はい……でも、鈴原って……トウジの?」
シンジはその名字を聞いて思い当たった。しかし、目の前にいる女性の年齢が自分の記憶と噛み合わない。
「はい。お兄ちゃんがお世話になりました。妹のサクラです」
「妹!?お姉さんじゃなくて?」
「はい。妹です。ふふ……」
32:名無しNIPPER[saga]
2019/05/28(火) 15:17:56.11 ID:VZdRWGZA0
その時、ミサトの立っていた入り口の方から聞き覚えのある声が聞こえる。
その声。
33:名無しNIPPER[saga]
2019/05/28(火) 15:18:39.32 ID:VZdRWGZA0
「――あれから14年経ってるってことよ。バカシンジ」
34:名無しNIPPER[saga]
2019/05/28(火) 15:19:18.85 ID:VZdRWGZA0
アスカは上着のポケットに突っ込んでいた手を外に出すと、ずかずかとシンジの方に歩み寄って行った。シンジは嬉しさのあまり椅子から立ち上がってアスカの名を呼んだ。アスカは無言のまま、大きく右腕を振りかぶってシンジに殴り掛かった。
「あうっ」
ドン、という大きな音が室内に響いた。アスカの拳がシンジの顔の目の前で止まる。シンジとサクラのいる部屋は一面のガラスで仕切られていた。さっきまでCGが映し出されていたのは、モニターではなく強化ガラスの壁だった。その分厚い壁に亀裂が走り、固く尖ったものが砕ける音がすると、辺りはしんと静まり返った。
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