7:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 10:37:14.79 ID:YWfCY9A20
「有咲……えーっと、市ヶ谷……あったあった」
連絡先に市ヶ谷有咲の名前を見つけ、沙綾は発信ボタンをタップする。そしてスマートフォンを耳に当てる。呼び出し音が一回、ニ回、三回……そこで電話がつながる。
『はいはーい。おはよー、沙綾』
「あ、朝からごめんね?」
『ううん、別に。かすみんが早く来るって言ってたしね、あたしも早めに起きてたし』
「……?」
電話越しの声は確かに有咲のものだった。けれど、なんだろう。拭えない違和感があった。
かすみん、という呼び方。それが指す人物はきっと香澄のこと……だと思う。あの有咲がそんなあだ名で香澄のことを呼ぶだろうか。というか、いつもよりも随分と落ち着いた調子の声のような気もするし……。
『どうかしたの、沙綾?』
「あ、う、ううん、なんでも……」逸れかけた思考が有咲の声で軌道修正される。そうだ、今はそれよりも自分のことだ。「……いや、なんでもってことはないんだけどさ」
『え、何かあったの? 大丈夫? 家のこと?』
「え? いや、違……わないこともないけど、違うかなぁ?」
『……なによそれ。はぁ、まったく……ボケナスはりみだけで十分よ。おたえとかすみんも普段はアレだし、せめて沙綾だけはシャンとしてて欲しいわ』
「……うーん?」
その言葉に違和感が拭いきれなくなってしまった。香澄とおたえに対してならともかく、りみに対して有咲が「ボケナス」などと言うことがあるだろうか。……あのテストの一件からりみに対してずっと優しくなった有咲が、こともあろうか「ボケナス」呼ばわりなんて……。
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