67:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:25:53.45 ID:YWfCY9A20
◆
週末の空は生憎の曇天だった。
分厚い雲が天をのっぺりと覆い、雨の気配こそないものの、太陽の光を深く閉ざした空は昼下がりだというのにどこか薄暗い。
「はぁ……」
沙綾は自室の窓から曇り空を眺め、ため息をこぼした。胸の内には眼前の風景にもよく似た暗雲が垂れこめていて、この重たい吐息と一緒に少しくらい出て行ってくれないか、と思ったけどそんなことはまるで起きなかった。
「……はぁ」
もう一度ため息を吐き出す。そして思うのは、机の上のメッセージのこと。
入れ替わってしまったもうひとりの自分と連絡が取り合える。それは喜ばしいことであるし、この事態の解決の糸口になってくれるかもしれない。加えて自分ではない山吹沙綾が無事に山吹沙綾をやっているということも嬉しいこと……のはず。
だけど、沙綾はカスミたちにこのことを打ち明けていなかった。
どうしてそうしたのか、と聞かれれば、沙綾も首を傾げてしまう。こんなバカげたことを言ったって信じてもらえないと思っているのか、どうなのか。
自分の本心が全然分からないけれど、それでも自身の胸中に募る気持ちの名前は罪悪感とか後ろめたさなどと呼ばれるものなのは分かる。
その気持ちを晴らす方法も分かる。こちらの世界のカスミたちにもすぐに伝えればいい。あなたたちの知っている沙綾ちゃんは無事だよ、連絡を取り合うことが出来るんだよ、と。
けれど、どうしてかそれが出来ない。
「なんでなんだろ……」
あんなに優しくしてくれる彼女たちのことをまだ信用していないのか。それとも……それとも、なんだろう?
何度も何度も繰り返した思考は、また同じ袋小路に入り込む。どうすればいいのか沙綾は分からなくなって、また重たいため息を吐き出した。
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