【バンドリ】さあやとサアヤの話
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50:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:11:06.15 ID:YWfCY9A20


 沙綾にとって、明るい教室で授業を受けるのは懐かしさと新鮮さが入り混じった体験だった。

 太陽の柔らかい光が差し込み、空席がある方が珍しい賑やかな教室。中学校まではこういう空間で自分も授業を受けていたことを、十年来の旧友に顔を合わせた心境で沙綾は思い出していた。

 常にキマッてる明るいカスミがいて、掴みどころがないタエがトンチンカンな受け答えをしたり、引っ込み思案なリミが緊張したような声で教科書を読んだり……。

 十六歳の人間であれば当たり前に享受できる日常。元の世界ではかなり無理をしなければもう手に掴めないと思っていた賑やかさ。それがなんとも眩しかった。

 ただこの明るい世界での授業にもいくつか問題があって、特に顕著だったのは授業内容だ。

 定時制と全日制では授業の数が違う。一日四コマしか授業がない定時に比べ、全日制の授業は一日六コマ。その分だけ授業内容は進んでいて、沙綾がまだ習っていないことが多くあった。

 授業中の暇な時に、丁寧な字で書かれたこっちの世界の沙綾のノートを見ていたけど、その内容はなかなか頭には入ってこない。

 これは苦労しそうだな、とため息混じりの苦笑を浮かべたところで、四時間目の授業が終わるチャイムの音が響いた。

 沙綾はカスミに手を引かれて、隣のクラスのアリサと合流して中庭へ向かう。

 秋の心地いい陽気。どこまでも晴れ渡った青空。生徒たちで賑わう中庭。その真っただ中で、ポッピンパーティーのみんなと食べるお昼ご飯。

 ただそれだけのことだった。

 世界中のどこにでもあるような何の変哲もない、高校生のお昼休みの一幕。

 だけどそれは沙綾にとってやっぱりどんなものにも勝る輝きを持っていて、胸の中に温かいものが広がっていく。

 それだけならよかったのだが、どうしてか同時に寂しさも感じてしまっていた。

 昨日の夜に感じたものと同質の寂寥。「これは一体何だろう?」と沙綾が考えているうちに昼休みも過ぎて、午後の授業も終わり、放課後になっていた。



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