45:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:07:28.15 ID:YWfCY9A20
「うう……っ、うああ……」
一度考えてしまうと止まらなかった。もう二度と話すことも触れることも甘えることも出来ないと思っていた、母親の存在が手を伸ばせばすぐに届く場所にある。
その事実に抱いた感情が嬉しさなのかなんなのか、沙綾には分からなかった。だけど、ただただ胸中に生まれた色の分からないその気持ちが涙を生み出し続ける。
悲しい思い出と優しい思い出が交互に蘇って、それにまた心が揺さぶられる。嗚咽が漏れる。
沙綾は手近にあった枕を手にして、それを抱きかかえるようにして顔を埋めて、どうにかその情けない泣き声をかき消そうとする。
そうしてどれほど経ったろうか。
色褪せた母との思い出が脳裏を三周くらいしたところで、ようやく荒く波打った感情の海も凪いでくれた。沙綾は一度深呼吸をして、強く抱きしめていた枕から顔を離す。
「……うわー」
そしてぐしょぐしょに濡れてしまった無残な枕を見て、口から何とも言えない呟きが漏れた。こんなに泣いたのはいつ振りだろう、と考えて、割と最近だったことを思い出す。
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