44:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:06:50.48 ID:YWfCY9A20
……もう二度と会えないはずだった。もうずっと、記憶の中でしか優しい笑みも温かさも声も感じることが出来なくて、その思い出も薄れていってしまうだけのはずだった。
だけど、何度頬をつねっても、目をこすっても、優しい記憶の中と変わらない姿の母がここにはあった。
アリサの蔵で家族のことを教えてもらった沙綾だが、流石に出で立ちや雰囲気は全く別のものだろうと思っていた。事実、弟の純と妹の紗南は、似ているところが多少あれど陸、海、空とは別人であった。
なのに、先ほどばったりと台所で出くわした母は沙綾の記憶の中の姿そのままで、だからこそ沙綾は涙を堪えるのに必死だった。
毎日顔を合わせる娘がいきなり泣き出したら、母にいらない心配をかけるだろう。
そう思って、母と死別したあの日からずっと培ってきた気丈な振る舞いでその場を切り抜けて、逃げるように自室へと駆け込んだ。
それで、気を紛らわせるためにこの世界のポピパのことを考えていた……んだけど。
189Res/213.78 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20