148:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:28:42.76 ID:YWfCY9A20
「……あなたって、本当にすごいと思う」
さあやがぽつりと声に出す。
「え……何が?」
きょとんと首を傾げた、自分の顔。それに向けて、さあやも言葉を投げる。
「入れ替わってさ、カスミちゃんたちに話を聞いて……それで、こっちの世界の山吹沙綾として過ごしててさ、ずっと思ってたんだ。あなたが過ごしてる環境って、すっごく大変じゃん。私も結構大変な方なのかなー、なんて思ったりしたこともあったけど……あなたに比べたら全然だったよ」
緩く首を振って、さあやも苦笑いを浮かべた。
「そんなこと、ないよ」
「あると思うよ、私は」
「…………」
他ならぬ自分の顔に断言されて、サアヤはなんて返せばいいのか分からなくなってしまう。それに向けて、さあやは続ける。
「……正直に言うとね、私、こっちの世界の沙綾で居続けろって言われたら……きっとダメになってたと思うんだ。学校にだってポピパのみんなと一緒にいれないし、母さんもいないし、まだまだ手のかかる弟がいて……父さんだって、あんな張り切り方してたらさ、いつかまた倒れちゃいそうだし……」
入れ替わったばかりの時のことを思い出す。アリサに導かれた蔵で、自分の世界とは違う友達を見て、サアヤの部屋でスマートフォンのToDoリストを眺めていた時のことだ。
あの時に感じた途方もない気持ち。それでも頑張らなくちゃと張った虚勢。それをしっかりと保っていられたのは、きっとカスミたちと香澄のおかげだった。
もし、まだカスミちゃんたちと出会っていない状況のサアヤと入れ替わっていたら……。有り得ないたらればだけど、そうなっていたら、きっととっくのとうに私は潰れていただろうな、とさあやは思う。
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