147:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:27:21.12 ID:YWfCY9A20
無言の車内に、レールの継ぎ目を超える音。しばらくすると、それに紛れてバラバラという音が聞こえてきた。
ふたりがお互いの背後の白い光が射しこむ車窓に目をやると、そこには雨粒が当たって弾けていた。相変わらず外の様子は真っ白でうかがえないけれど、あまり天気が良くないようだ。
「雨って嫌いだな」
沈黙を破って、サアヤが小さく呟く。
「そうなの?」
さあやが首を傾げる。
他愛のない言葉。それを、お互いがお互いに、自分の姿に向かって投げる。まるで鏡と喋っているような気分だったけど、そこにいるのは自分であって自分ではない存在だ。
「外に出るのも大変だし、気分が落ち込むから……あんまり好きじゃないんだ」
「ああ、確かに」
「あとさ……電車もあんまり好きじゃないんだよね。いや、電車っていうか、駅なんだけど」
「……どうして?」
「…………」
さあやが遠慮がちに尋ねてきて、サアヤは少しだけ迷ったような表情になってから、自嘲するような声色で自分自身の姿に向けて呟く。
「みんなに……迷惑かけたからさ」
「そっか……」
みんなに迷惑をかけた。そのみんなとは、Poppin'Partyの前のバンドのみんなのことだろう、とさあやは思った。
自分よりもずっと重たい境遇で、自分よりもずっと大切なステージに出られなかった時のこと。その心中を推し量ると、さあやの心にも影が差す。表情が曇る。
「ごめんね。暗い話、しちゃった」
そんな自分の顔を見て、サアヤは苦笑を浮かべた。七夕の日に香澄ちゃんに夢を撃ち抜かれて、もうとっくに整理出来ていたと思っていたけど……私はまだあの日のことを引きずっているんだろう。
189Res/213.78 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20