146:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:26:30.69 ID:YWfCY9A20
「……ごめんなさい」
ガタンゴトン。何度目かのその音が過ぎると、沙綾は――サアヤは口を開いた。
彼女の胸の中には、まだもうひとりの自分に対しての負い目があった。
机の上のメッセージでは謝ったけど、もしももうひとりの自分と顔を合わせられる時間があるのなら、どうしても言葉にして謝りたい。そう思い続けていたから、少し顔を伏せて言葉を続ける。
「私……サイテーなこと考えてた。こっちの世界がすごく温かくて、まるで陽だまりみたいで……そこを自分のものにしようって考えてた」
ひとつ分の陽だまりには、ひとりしか入れないのに。自嘲の響きがこだまする。
「……ううん」
それを聞いて、沙綾も――さあやも、緩く首を振ってから口を開いた。
「気にしないで。気持ちは分かるもん。あなたがこれまで、どんなに大変な環境で過ごしてきたのかも身に沁みるほど分かってるから」
彼女の口からは自然と優しい声が出る。
開口一番に謝られるだろうな、とはさあやも確信を抱いていた。一時は罪の意識に身体を擦り潰されそうなほど追い込まれていただろうことも、自分のことのように理解できていた。
「うん……ごめんね。ありがとう」
「どういたしまして」
サアヤが伏せていた顔を上げる。さあやがそれを見つめ返す。それきり、またふたりの間には沈黙がやってきた。
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