139:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:20:45.14 ID:YWfCY9A20
そんな家路をたどり、沙綾はやまぶきベーカリーに帰り着く。お店の明かりはとっくに消えていた。裏の勝手口に回り込むと、そちらの窓からは明かりが漏れている。
勝手口のドアを静かに開いて、沙綾は家に入る。
「あら、おかえりなさい」
すると、入ってすぐの台所で食器を洗っていた母が、沙綾に振り向いた。
「……うん。ただいま」
それに少しだけ言葉を詰まらせながら応える。
「寒かったでしょ? 何か温かいものでも飲む?」
「ううん、平気だよ。それより、お母さん……」
「私も平気。そんなに心配しないの」
娘の顔を見ただけで何を言いたのか察したのだろう。先回りしてそう言われて、沙綾は「うん……」とだけ頷いた。それからダイニングテーブルの椅子に腰かけて、再び洗い物を始めた母の背中を眺める。
胸中には、星空を眺めていた時よりもずっと確かな予感がある。根拠も何もないけど、明確な形と色を持った予感。それが正しいのであれば、沙綾は母に言わなければいけないことが山ほどあると思っていた。
189Res/213.78 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20