千歌「ポケットモンスターAqours!」 Part2
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154: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2019/05/14(火) 00:15:18.14 ID:gM5+0Wds0

ムーランドは私の言葉に対して、首を縦に振る。

ムーランドは頭が良く、人に良く懐く。

案外、ここを通る人の顔を覚えているのかもしれない。

そして、そんなムーランドの元に訪れて、何がしたかったかなんて、言うまでもない。


梨子「ムーランド……──あのときは助けてくれて、ありがとう」


私はそう言って頭を下げた。


 「ヴォッフ…」

梨子「私……あのときは本当にビックリして、気絶しちゃったけど……。私が他のポケモンに襲われない様に、自分の近くで守ってくれてたんだよね」


千歌ちゃんに発見されたとき、私はムーランドのすぐ近くでヨーテリーとハーデリアに群がられていたと聞いた。

だけど、不思議なことに……こんなだだっ広く、絶えず野生のポケモンたちが言ったり来たりしている場所で、

怪我どころか、服も、リュックも、道具も……それこそ、一番狙われるであろう食料も、全てが気絶する前と何も変わらない状態のままで……。

それはどう考えても、このムーランドが守ってくれていたお陰だった。


梨子「あのときは怖がって……悲鳴をあげて……助けてもらったのに、お礼の一つも言えなくて……だから、ここに来たの」

 「ヴォッフ…」


私は一歩前に踏み出す。


 「ヴォッフ」


一歩ずつ近付く。

一歩近付くごとに、心臓の鼓動が少しずつ早くなっていく。

──大丈夫。

大丈夫。怖くない。

心の中で、自分に言い聞かせるように。

近付いて、


梨子「……ありがとう」


ムーランドの顔に触れた。


梨子「…………」

 「ヴォッフ…」

梨子「……さわれた」

 「ヴォッフ」

梨子「……さわれた……っ……」


その事実が、なんだか嬉しくて、


梨子「……よかった……っ……」


私は安堵の涙を流しながら、ムーランドに抱きつく。


梨子「お母さん……っ……私、もう大丈夫だよ……っ……」


幼少のときから、心に抱えていた傷を──やっと乗り越えることが出来た。



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