【艦これ】これからこのことこれからのこと【漣】
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12: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/05/04(土) 22:03:39.74 ID:J8yp6zh90
漣は長らく俺の秘書を務めてくれていた艦娘であり、同時に俺の……誤解を恐れない言い方をすれば、恋人であった。
泊地が解体され、みんながそれぞれのこれからを歩み出すように、当然漣にも彼女の新しい生活が、人生が、待っている。
人生を直線に喩えることがあるだろう。慣用句的には、それは交わったり、並行であったりする。そして情緒を含めれば、「いずれどこかで交わる」だとか、「交わることはなくとも隣にいる」だとか、そんな表現がされる。
13: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/05/04(土) 22:05:07.34 ID:J8yp6zh90
海が平和を取り戻したとはいえ、その事実は陸の人間にはいまいちピンとこないものだろう。様々な疑いは実際あちこちで浮かび上がっていて……平和だけでなく、そもそもの深海棲艦やら艦娘やらにも、保守的で懐疑的な人間は存在する。
艦娘であったことをおおっぴらに掲げて生きていける世の中には、残念ながらなっていない。なりそうもない、と断言できるほどには俺は悲観してはいなかったが。
「まぁ、あれだ。お前くらいの年なら、いくらでもやり直しはきく」
14: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/05/04(土) 22:07:47.88 ID:J8yp6zh90
「安定飛行のために、可愛い奥さんはいかがでしょ?」
制服のスカート、その裾を指先で摘まんで、漣はひらひらとさせる。白く健康的な太腿が眩しい。
大きくため息をついた。こんなときばかりは自らの理性が恨めしい。
15: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/05/04(土) 22:08:26.31 ID:J8yp6zh90
「……申し訳ないが、だめだ」
「……天龍さんは結婚するのに?」
16: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/05/04(土) 22:09:01.29 ID:J8yp6zh90
「そんな怖いことはないですよ」
優しく抱きしめられる。
17: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/05/04(土) 22:10:06.26 ID:J8yp6zh90
「……漫画の見すぎだ」
「あははっ。かもしれませんね。
でもご主人様、漣は本気なんです。本気で言ってるんですよ。一旦離れ離れになって、それでもまた会えたなら、それは運命じゃないですか。奇跡だと思いませんか!」
18: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/05/04(土) 22:10:40.93 ID:J8yp6zh90
「女の子にここまで言わせるなんて、ごっ、ご主人様は、ほんとに甲斐性がないんですから」
「……すまん」
19: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/05/04(土) 22:11:13.85 ID:J8yp6zh90
「い、いえっ。別にいいんですが、いいっていうか、確かにそう言う空気でしたけれどもっ!」
大きく深呼吸をして、
20: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/05/04(土) 22:11:47.92 ID:J8yp6zh90
* * *
実のところ、不安は消えてなくなっていた。
21: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/05/04(土) 22:12:34.71 ID:J8yp6zh90
もしくは、これからのことが一旦落ち着いてようやく、更なるこれからのことを考えることができるという判断なのかもしれない。決断を下すのは熱に魘された頭ではなく、冷え切った理性によるべきだとは、俺も漣も思っている。
だから殆ど出来レースなのだ。
心に幾許かの余裕をもって、俺はいま新居の前に立っていた。新居と言っても新築戸建などというはずもなく、築浅の集合住宅である。
22: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/05/04(土) 22:13:04.03 ID:J8yp6zh90
「まぁ、おいおい慣れるだろうさ」
自分に言い聞かせる。正式な入社は二週間後。それまでは身の回りを整えたり、地理などを覚える期間にあてられている。
最低限の家具などは海軍から支給されているのがありがたい。とはいえ、パソコンや家電製品の大半は揃えなくてはならないし、スマホの契約なども手付かず。やらねばならないことは多い。
23: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/05/04(土) 22:13:33.31 ID:J8yp6zh90
一ヶ月……二週間……、うぅむ。
十日。十日我慢したら、近況を尋ねてみよう。
俺は三つの菓子折りを持って扉を開けた。両隣と下には挨拶をしておいたほうが後腐れはない。そこまでうるさくつもりもなかったが、まぁ処世術だろう。
24: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/05/04(土) 22:14:08.28 ID:J8yp6zh90
扉が開く。
桃色が視界に広がる。
25: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/05/04(土) 22:14:37.03 ID:J8yp6zh90
「奇跡?」
そんなものはない。
26: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/05/04(土) 22:15:19.79 ID:J8yp6zh90
「……やっぱり、運命だ、んむっ!?」
漣の口づけで思考が吹き飛ぶ。甘い甘い唾液は、俺をだめにする毒と何ら変わりがないように思えた。毒と甘露は紙一重なのだ。
やられっぱなしは性に合わなくて、背中の痛みを誤魔化すためにも、俺は漣の小さな、そして柔らかい体を掻き抱く。こいつの全てが俺のために用意されたようにすっぽり収まる。
27: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/05/04(土) 22:16:29.29 ID:J8yp6zh90
余談ではあるが。
それから二か月分、使いもしない俺の部屋の家賃を払い続けていたのは、単純に癪だったからである。
28: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/05/04(土) 22:17:53.43 ID:J8yp6zh90
――――――――――――
おしまい。
なんでGWなのに俺の隣には漣がいないの?大井っちもいないの?
わからん。謎だ……。
29:名無しNIPPER[sage]
2019/05/04(土) 22:55:58.12 ID:0iVoXcbDo
待つ次回
30:名無しNIPPER[sage]
2019/05/05(日) 12:08:48.14 ID:qFFfOcq2o
おつ 俺もとなりに欲しい…
31:名無しNIPPER[sage]
2019/05/06(月) 08:49:33.68 ID:LjQZjxCFO
乙
32:名無しNIPPER[sage]
2019/05/10(金) 14:33:03.84 ID:/rmqkGiA0
この作者さんの書くSSは面白いんだがどの作品もタイトルがイマイチなんだよな
もったいない
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