【艦これ】これからこのことこれからのこと【漣】
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7: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/05/04(土) 22:00:15.39 ID:J8yp6zh90
鳳翔は調理免許を取るために専門学校へ進む。夕張は高卒の認定を受けてから、高専か、工学部へ進んで人工知能の研究に携わりたいと言っていた。川内は貯まりに貯まった給金でバイクを買い、日本中を旅するらしい。
駆逐艦の殆どは遅れた勉強を取り戻すために、防衛省が用意してくれた学校への入学を決めている。天龍なんて整備班の男と結婚するそうだし、吹雪は地元に帰って稼業のレタス畑を手伝うと報告があった。みんな笑顔で日常へ戻る。戻れるのだ。
お前らだって、と喉元まで出かかった言葉は呑みこんだ。それが正しかったのかはいまだにわからない。きっと首を縦には振ってはくれないだろう。が、しかし、そんな言葉を期待していたんじゃないかと、少しだけ後悔する。
8: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/05/04(土) 22:00:59.00 ID:J8yp6zh90
「うまくやれるといいんですが」
「どこでだってうまくやれないということはないよ。民間出のきみだって、なんだかんだ提督として様になったように」
9: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/05/04(土) 22:01:28.59 ID:J8yp6zh90
と、執務室がノックされた。最早この建物にいるのは、俺と博士を除けば一人しかいない。ゆえに誰何の必要はない。
「漣か、入っていいぞ」
10: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/05/04(土) 22:01:56.42 ID:J8yp6zh90
「……」
「……」
11: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/05/04(土) 22:02:55.05 ID:J8yp6zh90
手のひらが熱い。汗が滲んで、滑る。手繰り寄せるように漣の指を絡めた。
「……寂しくなるだけだろう」
12: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/05/04(土) 22:03:39.74 ID:J8yp6zh90
漣は長らく俺の秘書を務めてくれていた艦娘であり、同時に俺の……誤解を恐れない言い方をすれば、恋人であった。
泊地が解体され、みんながそれぞれのこれからを歩み出すように、当然漣にも彼女の新しい生活が、人生が、待っている。
人生を直線に喩えることがあるだろう。慣用句的には、それは交わったり、並行であったりする。そして情緒を含めれば、「いずれどこかで交わる」だとか、「交わることはなくとも隣にいる」だとか、そんな表現がされる。
13: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/05/04(土) 22:05:07.34 ID:J8yp6zh90
海が平和を取り戻したとはいえ、その事実は陸の人間にはいまいちピンとこないものだろう。様々な疑いは実際あちこちで浮かび上がっていて……平和だけでなく、そもそもの深海棲艦やら艦娘やらにも、保守的で懐疑的な人間は存在する。
艦娘であったことをおおっぴらに掲げて生きていける世の中には、残念ながらなっていない。なりそうもない、と断言できるほどには俺は悲観してはいなかったが。
「まぁ、あれだ。お前くらいの年なら、いくらでもやり直しはきく」
14: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/05/04(土) 22:07:47.88 ID:J8yp6zh90
「安定飛行のために、可愛い奥さんはいかがでしょ?」
制服のスカート、その裾を指先で摘まんで、漣はひらひらとさせる。白く健康的な太腿が眩しい。
大きくため息をついた。こんなときばかりは自らの理性が恨めしい。
15: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/05/04(土) 22:08:26.31 ID:J8yp6zh90
「……申し訳ないが、だめだ」
「……天龍さんは結婚するのに?」
16: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/05/04(土) 22:09:01.29 ID:J8yp6zh90
「そんな怖いことはないですよ」
優しく抱きしめられる。
17: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/05/04(土) 22:10:06.26 ID:J8yp6zh90
「……漫画の見すぎだ」
「あははっ。かもしれませんね。
でもご主人様、漣は本気なんです。本気で言ってるんですよ。一旦離れ離れになって、それでもまた会えたなら、それは運命じゃないですか。奇跡だと思いませんか!」
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