47: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/05/01(水) 00:15:12.79 ID:3V1PGSXQ0
プロデューサーさんが大きくため息をつく。
「正直言って、大誤算だ。辻野あかりがこれほどとは予想していなかった」
「わたしもっす」
48: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/05/01(水) 00:16:27.22 ID:3V1PGSXQ0
スタッフが出番だというような合図をし、わたしはステージに向けて足を進める。
辺りはまだ、あかりちゃんの残していった喧噪に包まれている。遮断しようと思えばできた。だけど、あえてそのままにしておいた。
ステージ中央、マイクスタンドに差さっていたマイクを手に取る。
さっきまであかりちゃんが握っていたそれをくるんと回し、特に意味もなく軽く跳躍してみせる。
ようやくわたしの姿に気付いたように、客席の声がすっと静まる。
49: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/05/01(水) 00:18:00.29 ID:3V1PGSXQ0
*
『お待たせしました。審査が出揃いましたので、W.I.N.G.決勝の結果発表をさせていただきます』
50: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/05/01(水) 00:18:28.48 ID:3V1PGSXQ0
『辻野あかりさん、喜びの声をどうぞ』
あかり『はい! えっと、その――山形りんごを、よろりんご!!!』
51: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/05/01(水) 00:19:30.26 ID:3V1PGSXQ0
*
それから2日後、あさひが消えた。
元々、結果にかかわらず決勝の翌日はオフで、事務所にやってくるのは、更に次の日という予定になっていた。
52: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/05/01(水) 00:20:10.13 ID:3V1PGSXQ0
あさひは事務所からほど近くの公園で、ベンチに腰掛けて、のん気に林檎をかじっていた。
「あ、プロデューサーさん、お疲れさまっす」
こちらに気付いたあさひが、平和の象徴みたいな顔で手を振ってくる。あきれて、怒る気も失せた。
53: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/05/01(水) 00:21:01.59 ID:3V1PGSXQ0
「詳しいな、わざわざ調べたのか」
「受け売りっす」
「誰から?」
54: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/05/01(水) 00:21:36.58 ID:3V1PGSXQ0
「プロデューサーさん、さっき、なんで慌ててたんすか?」
「……引き抜きの話でも出たのかと思った」
「引き抜き……あー、誘われたっす。それもなんと、諸星きらりちゃんから」
55: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/05/01(水) 00:22:36.74 ID:3V1PGSXQ0
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今までのわたしは、色んな楽しいことを探していた。ずっとずっと、ひとりぼっちで。
自分がなにか変だということはわかっていた。
56: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/05/01(水) 00:23:15.74 ID:3V1PGSXQ0
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『本日のゲストは、大躍進中のアイドル、辻野あかりさんです!』
あかり『こんにちは! みなさんよろりんご!』
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