52: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/05/01(水) 00:20:10.13 ID:3V1PGSXQ0
あさひは事務所からほど近くの公園で、ベンチに腰掛けて、のん気に林檎をかじっていた。
「あ、プロデューサーさん、お疲れさまっす」
こちらに気付いたあさひが、平和の象徴みたいな顔で手を振ってくる。あきれて、怒る気も失せた。
「お前な、携帯はどうした?」
「置いてきたっす。この戦いにはついてこれそうにないと思って」
「なに言ってんだ」
急激に疲労感に襲われ、ため息をつきながらあさひの隣に座り込む。
「……プロデューサーさん、なんか疲れてるっすか?」
「おかげさまでな」
「疲れてるときは甘いものがいいっすよ、はい」
あさひが大企業のロゴみたいになった林檎を差し出してくる。
食べかけを人によこすなと思ったが、さんざん走り回って凄まじく喉が乾いていたこともあり、黙って受け取って、あまり考えないようにしてひと口かじる。
どこか覚えのある甘さが、口中に広がった。
「これ……サンふじか?」
「そっすよ」
あさひが誇らしげにふふんと鼻を鳴らす。
「サンふじは、種類そのものは日本の林檎でいちばんメジャーな『ふじ』と同じなんすけど、ふじは成熟期に虫よけとかいい色を出すために専用の袋を被せるんす。サンふじはこの袋を使わずに裸のまま育てたもののことで、表皮が荒れたり、貯蔵性が低かったりするけど、太陽をいっぱい浴びて、ふじよりずっと甘味が強くなるらしいっす」
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