一ノ瀬志希「ほころび」
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92:名無しNIPPER[saga]
2019/04/29(月) 00:56:26.98 ID:SYS+AFC90
 一旦事務所に戻り、夕日が差し込むガレージに駆け込む。
 ピンクのキンモクセイは健在で、夕美ちゃんが来た形跡は――ちょっと期待していたけど、やはり無かった。

 でも、落ちこむことはない。
 あたしの予測は確信に変わっている。

 夕美ちゃんは絶対にあそこにいる。
 でなければ、夕美ちゃんがあの日、あの丘に現れた理由がない。

 東京で、夕美ちゃんの帰る場所が他にあるとすれば、あそこしかない――!


 夕美ちゃん、もう大丈夫なんだよ。

 夕美ちゃんを陥れようとした連中は、直に真実を知った世間によって裁かれる。
 あの件で、夕美ちゃんを責める人は誰もいなくなる。

 あたしと一緒に、まだまだアイドルを続けられるよ。

 活動再開の計画立案はプロデューサーに任せて、家財はゆっくり揃え直したらいい。
 なんならあたしの部屋に一緒に住もうよ。

 そうだ、それがいい!
 せっかく空っぽにしたあの部屋は、夕美ちゃんとあたしの植物園にしちゃおう!
 いっそ大々的に部屋中をリフォームしてさ、フローリングを剥いで土をぜーんぶ敷くの。
 空調も高くてしっかりしたヤツを入れて、厳格に温度や湿度管理ができる部屋も作ろう。
 夕美ちゃんの希望に応じて、あたしが品種改良して新しいお花もポンポン開発しちゃえば、あたしも楽しいし夕美ちゃんも――。


 ――楽しい、でしょ?
 だから。


 一緒に帰ろう。



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