9:名無しNIPPER[sage saga]
2019/04/28(日) 19:34:57.01 ID:D/gZfYJM0
実際、夕美ちゃんの運動神経はたぶん悪い方じゃない。
ただ何よりも、彼女はとってもマジメだ。
レッスンに対し真摯に取り組む姿勢は、他の子達と比べても一際なのだそう。
あたしは、どうだったんだろう?
ふと、候補生になりたての頃のレッスンの様子を思い返してみる。
「お前は特別だ、一ノ瀬」
顎に手を当てて、うーんと唸ってみせたあたしを見るにつけ、トレーナーさんがピシャリと言い放った。
「相葉も、あんな子と自分を比べるようなことはしないように。いいな?」
「は、はぁ」
あんな子って、そんな言い草あるー? ちょっと志希ちゃん傷ついたなぁ。
天才だなんだと、小さい頃から言われてはきた。
ギフテッド――つまりあたしの才覚は、天からの授かり物なのだと。
ダンスやボーカルも、トレーナーさんが与えてくれる課題に対し、水準はクリアできていた、らしい。
それは、プロデューサーに言わせればとてもすごいことなのだという。
一方で、それが簡単だったのかと聞かれれば、あたしにも分からない。
簡単か難しいかの評価は、比較対象がなければできない。
あたしにとって、それらのレッスンは初めての出会い、唯一の経験であり、「やったらできた」以上の意味は持たないのだ。
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