85:名無しNIPPER[saga]
2019/04/29(月) 00:26:02.96 ID:SYS+AFC90
通された先のリビングは、夕美ちゃんの部屋ほど極端ではないにせよ、やはり色んな花のイイ匂いで一杯だった。
大きな窓から差し込む陽の光が部屋を明るく照らして、あたしが勝手に抱えている陰鬱な思いを少しだけ軽くしてくれる。
ジャスミンティーを淹れながら、夕美ちゃんのお母さんは申し訳なさそうに語った。
「夕美は、つい昨日までここにいたのですが……」
「どちらに行かれたのですか?」
差し出されたカップには目もくれず、プロデューサーは身を乗り出す。
「小学校に行っていました。夕美の母校です」
「小学校?」
「あの子が、ボランティアで花壇の世話をしている所の一つです。
他にも、この近所の公園だとか、花屋のそばにある花壇なんかに、あの子はマメに足を運んで……
大学に通い、アイドルをやるようになってからも、変わらずにあの子は定期的にこちらに帰ってきて、それを続けています」
ボランティアで花壇の世話、か――。
いよいよ筋金入りだ。今さら驚くべきものでもない。
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