一ノ瀬志希「ほころび」
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5:名無しNIPPER[sage saga]
2019/04/28(日) 19:19:19.40 ID:D/gZfYJM0
 ――おっといけない。
 火にかけてあった丸形フラスコをそっとどかす。加熱時間は3分52秒。温度は116度。メモメモ。

 この世界には二つしか無い。
 予測できるものと、できないもの。

 興味があるから予測し、検証する。
 仮説したとおりの事象が発現されれば嬉しいし、想定外の事態が起きればわんだほー。
 3分おきに止めどなく発生するあたしの知的好奇心は、ケミカルだけでは抑えが効かない代物だったらしい。

 ただ、次なる興味の対象が、なぜアイドルだったのかと聞かれても、リッパな理由なんてない。
 たまたま彼を見かけて、楽しそうなコトをしてて、イイ匂いがしてたから。
 あまりに未知なる領域の、右も左も分からない取り留めの無さが、当時のあたしにはたまらなかったんだろうねー。


 ふふっ――そう考えると、新しい子が入るというのは、あたしにとって大いに歓迎すべきことだ。
 プロデューサーは、反応そのものは単純だけれど、こうして新しいエッセンスをあたしに供給し、興味深い事象を引き起こし続ける。

 さて、何をし――。
「あのぉ」



 ――?

「へ、部屋、間違えちゃったかな?
 ここに来てって、言われたんですけど……」



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