一ノ瀬志希「ほころび」
1- 20
28:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 20:43:16.63 ID:D/gZfYJM0
 木々に囲まれた遊歩道を5分ほど歩くと、視界が開けた。
 辺り一面に芝生が広がり、右手にはそこそこ大きな木が一本植わった小高い丘が見える。

 ロクに管理もされてなさそうなのに、綺麗な芝だな。
 そう思いながら、あたしは丘の上を目指した。
 存外に広い視界はあたしの遠近感覚を狂わしたようで、目的地までは結構距離があり、たどり着くころには息が上がっていた。

 ふぅっ、と息をついて腰を下ろしたが最後、そのままデーンッともんどり打って寝転んでしまう。


 どこまでも晴れ渡る青空。通り抜けていく爽やかな風。

 よく言われる、ゲンダイジンに必要なゆとりじゃないかにゃ? コレって。
 年がら年中やりたい放題のあたしがゆとりを説くのもなんだけど、あのサラリーマンのおじさんは、たぶん来た方がいい。

 まぁいっか。
 気持ち良いのは事実だし、目を瞑って、このままウトウトとまどろんでいくのも悪くない。


 今日は、大した予定はなかったな。
 仕事もレッスンも無くて、今度出るオーディションの戦略を練ろうって、プロデューサー言ってたっけ。
 あたしだけが出るから、夕美ちゃんには関係が無い。そもそも彼女は今日一日オフだった。

 つまり――今あたしが失踪したという事実すら、夕美ちゃんは知る由も無い。

 さすがに、今日のあたしを見つけることはできないだろう。



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
138Res/139.96 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice