一ノ瀬志希「ほころび」
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27:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 20:39:46.33 ID:D/gZfYJM0
 たどり着いた先は、無人駅だった。

 設置されたばかりであろう、不釣り合いなほどピカピカの改札にICカードをかざす。
 出てから気づいたけど、乗り越し精算機とかいうヤツが見当たらない。
 もしカードにチャージした残金が足りなかったら、どうすればいいんだろう?

 まぁいいや、えーと――現在、午前11時半。
 およそ2時間乗って、たぶんここはまだ東京なのかにゃ?


 あー、それにしても良い天気ー♪
 緑豊かな山々と小川、およそ東京とは思えない田園風景が歩けど歩けど続いていく。
 たまーに車が通りすぎる以外は、なーんにもない所だった。

「……なんか懐かしいな」
 誰に聞かせるでもなく、口から零れ出た。
 懐かしい――?

 確かに、記憶の中にあるあたしの生まれ故郷、岩手はこんなカンジだったかも知れない。
 何にもなくて、優しくて――退屈で。


 そのうちに、そこそこ大きな公園が見えてきた。
 車での旅行者が立ち寄るための、道の駅みたいなものかにゃ?
 でも、管理人らしきお爺ちゃんが小屋で寝ている以外は、一人の利用者もいないようだ。

 ちょっと喉が渇いたので、自販機でジュースを買う。
 一口飲んで、なんかヘンな味がしたので、賞味期限を見ると昨年の日付だった。

 ポイッと投げ捨てて、公園の入口へ――あ、入場料なんて取るんだココ!
 にゃははー、セコいねー。でも、お世辞にも経営が順調そうには見えない。

 ペンキ缶に穴を開けただけの粗末な料金箱に100円玉を1枚。
 ――いや、2枚入れてあげるか。



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