29: ◆XUWJiU1Fxs
2019/04/25(木) 00:49:22.86 ID:cgXM4cARO
「ウィーンは治安の良い街と言われますが、それでもスリや置き引き、ニセ警官はいるものです」
おまわりさんとのやりとりを終えた村松さんはそう話す。特に日本人のパスポートは悪い意味手間需要があるらしく高く取引されるらしい。
「うっかりしていた私が悪いです……」
当然盗んだ不届き者が百悪いのだけど、ゆかりは重石がずっしりと乗せられたように落ち込み倒している。
「ま、まあ見つかる可能性もありますから! ウィーンの警察は優秀ですしね! とりあえず大使館に連絡を入れておりますので、この盗難証明とパスポート用の写真を持っていけば再発行手続きができます」
「あの、写真が手元にないのですが……」
一応宣材用の写真はあるがパスポートには向いていない。どこかに証明写真撮影機でもないだろうか。
「ああ、それなら。シュトラウス像の先にある写真に行ってもらえましたら。あそこのオヤジは日本贔屓で言ってもらったらパスポート用の写真も用意してくれますよ」
「なるほど、んじゃ行こうかゆかり」
「はい……」
憧れの街に裏切られたんだ。落ち込む気持ちもよくわかる。なるだけ周囲の風景の感想を言いながら写真屋へと向かうのだった。
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